は、症状が出てから手術を考える病気とは限りません。 2025年の弁膜症ガイドラインでは、の重症ARについて、 やだけでなく、体格で補正した、容積で評価するまで含めて 手術時期を検討する考え方が明確になりました。さらに2025~2026年には、 の・左室容積・・を用いたリスク評価の研究も進んでいます。
公開・最終更新:2026年10月7日
2026年時点の重要点は、「症状がない=まだ手術を考えなくてよい」とは限らないことです。 2025 では、の重症でも ≤50%、 >50 mm、 >25 mm/m²のいずれかで 大動脈弁手術が推奨されます。さらに手術リスクが低い患者では、 LVEF ≤55%、LVESDi >22 mm/m²、 >45 mL/m²のいずれかを満たす段階から、 より早い介入を検討できるとされています。[1]
ただし、これらは「重症AR」であることを前提とした治療判断の指標です。 数字だけで手術適応を自己判断するものではなく、症状、経時変化、弁と大動脈の形態、手術リスク、 などを含めて循環器内科・心臓血管外科で総合判断します。
低下だけを待たず、・・とその推移を追うことが重要です。
・・左室容積・線維化・など、心エコーだけでは得にくい情報を補完します。
専用デバイスのエビデンスは進展していますが、手術可能な患者では外科治療が基本です。
本記事は「手術のタイミング」と2025~2026年の更新点に絞っています。 基礎知識は既存記事 「大動脈弁閉鎖不全症」 をご覧ください。
2026年に押さえるべき最新ポイントは「症状」より前の左室変化
慢性の大動脈弁閉鎖不全症では、逆流した血液を受け止めるために左心室が徐々に拡大します。 代償できている間は自覚症状が乏しくても、左室の構造変化や心筋障害が進んでいることがあります。
2025 は、重症の介入判断を 症状、、左室径だけではなく、左室容積や体格補正値も含めて考える方向へ進めています。 3D心エコーやは2D心エコーより左室容積・LVEFを正確に評価でき、境界例で有用とされています。[1]
2025 ESC/EACTSで示された重症ARの手術基準
2025年8月に公表された弁膜症ガイドラインでは、重症に対する介入基準が整理されました。 特に注目したいのは、でも左室機能・左室サイズが一定の閾値に達すれば手術を推奨する点と、 低手術リスク例ではさらに早い段階の指標を用いて手術を検討できる点です。[1]
| 状況 | 2025 ESC/EACTSの主な基準 | 推奨の強さ | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|
| の重症AR | 左室機能にかかわらず、手術リスクが許容される場合 | Class I | 基本的に大動脈弁手術を推奨 |
| 無症候性の重症AR |
≤50% または >50 mm または >25 mm/m² |
Class I | 症状がなくても大動脈弁手術を推奨 |
| 無症候性・重症AR・低手術リスク |
LVEF ≤55% または LVESDi >22 mm/m² または >45 mL/m² |
Class IIb | より早い段階で手術を検討してよい |
| 手術不適格の選択症例 | 症候性の重症ARで、解剖学的に適合し、が手術不適格と判断 | Class IIb | 経験豊富な施設でを検討できる |
日本のガイドラインはどう考える?
日本循環器学会(JCS)の現行の弁膜症ガイドラインは2020年改訂版です。[2] 日本循環器学会は次の「弁膜症診療ガイドライン」を2027年3月に発表予定としています。[3] そのため2026年10月時点で「最新の国際的な閾値」を確認する際は、2025 ESC/EACTSの更新が重要な参照点になります。
無症状の重症ARで手術時期を考える5ステップ
「症状がない重症」を一律に経過観察するのではなく、次の順序でリスクを絞り込むと理解しやすくなります。
-
本当に「重症AR」かを統合評価する
心エコーの単一指標だけではなく、複数の定量・半定量所見を組み合わせます。 結果が食い違う場合や境界例ではが補完になります。 -
「無症状」が本当に無症状かを確認する
日常生活の活動量が低いため症状を自覚していない場合があります。 ガイドラインでは、手術基準を満たさず症状を訴えない重症ARで、可能ならを行うことが示されています。[1] -
の左室基準を確認する
≤50%、 >50 mm、 >25 mm/m²のどれかに達していないかを確認します。 -
低手術リスクなら「より早い検討域」も見る
LVEF ≤55%、LVESDi >22 mm/m²、 >45 mL/m²はの検討域です。 とくに体格差を考えると、絶対径だけではなく指数化した値や容積を見る意味が大きくなります。 -
1回の閾値ではなく、経時変化とCMRを重ねる
左室拡大やLVEF低下が進行している場合、CMRの・・左室容積・・などが追加判断材料になります。
LVESD・LVESDi・LVESViは何が違う?
2025年ガイドラインを理解するうえで最も混乱しやすいのが、、、の違いです。 いずれも心臓が収縮し終わった時点の左心室を評価しますが、測り方と体格補正が異なります。
| 指標 | 日本語 | 何を見る? | 2025 での主な位置づけ |
|---|---|---|---|
| 左室駆出率 | 左室から血液を送り出す割合 | ≤50%で、低リスク例では≤55%もの検討域 | |
| LVESD | 左室収縮末期径 | 収縮末期の左室の「直径」 | >50 mmでClass I |
| LVESDi | 左室収縮末期径係数 | LVESDをで補正 | >25 mm/m²でClass I、低リスク例では>22 mm/m²もClass IIb |
| i | 左室収縮末期容積係数 | 収縮末期の左室「容積」を体表面積で補正 | >45 mL/m²が低リスク例のClass IIb検討域 |
2025年の多施設研究では、1,070例の有意を対象にLVESDiとLVESViを組み合わせて評価したところ、 どちらか一方だけが拡大している群でも、両方が基準未満の群より死亡リスクが高く、 線形径と容積の両方を見る意義が示されました。[4]
参考:LVESDi / LVESVi 簡易計算
身長・体重からMosteller式で体表面積(BSA)を計算し、LVESDとLVESVを体格補正します。 検査結果を理解するための参考ツールであり、診断・手術適応を判定するものではありません。
※この表示は「重症AR」「無症候性」などの臨床条件を判定していません。 弁逆流の重症度、大動脈径、症状、運動負荷、血圧、年齢、併存疾患、手術リスク等を含め、必ず担当医が判断します。
心臓MRI(CMR)は「手術前の最後の確認」ではなく、リスク層別化へ
心エコーは評価の第一選択ですが、は左室容積やを高い再現性で測定し、 (regurgitant volume)・(regurgitant fraction)、などを評価できます。 2025 でも、境界例や経時変化を評価する場面でCMRの重要性が高まっています。[1]
2025年:1,579例のメタ解析でCMR指標と予後の関連
2025年のネットワークメタ解析では、無症状または症状の乏しい中等度~重症ARを含む8研究・1,579例を統合。 逆流量・逆流率、LVEDVi/などの左室リモデリング指標が有害イベントと関連し、 遅延造影()も複合エンドポイントと関連しました。[5]
2026年:CMR由来GLSがガイドライン指標に追加情報
2026年6月に発表された研究では、慢性の中等度~重症ARで無症状~軽症( I~II)の385例を解析し、 CMR feature trackingによる左室global longitudinal strain()が主要心血管イベントと独立して関連しました。 絶対値が1%悪化するごとに調整HRは1.210で、LVEF・・・LVESViなどの ガイドライン指標にFT-を加えると予測性能が改善しました。[6]
同研究では絶対値12%が実用的なリスク層別化のカットオフとして示されましたが、 12%を「手術の新しい確定基準」と解釈することはできません。 後ろ向き研究であり、現時点ではガイドライン基準を補完する候補指標と考えるのが適切です。
経過観察はどのくらいの間隔?「閾値に近いほど短く」が基本
2025 は、の重症では年1回のフォローを推奨し、 手術基準に近づいている場合や左室拡大・低下が進行している場合には 3~6か月ごとのより短いフォローを推奨しています。中等度ARでは年1回の臨床フォロー、 心エコーは2年ごとが目安として示されています。[1]
| 状態 | フォローの目安 | 特に見る項目 |
|---|---|---|
| 無・重症AR | 原則 年1回 | 症状、LVEF、/、左室容積、大動脈径 |
| 手術基準に近い/左室拡大・LVEF低下が進行 | 3~6か月 | 経時変化、、必要に応じ・運動負荷 |
| 中等度AR | 臨床フォロー 年1回/心エコー 2年ごと | 重症化、左室拡大、新規症状 |
TAVIは大動脈弁閉鎖不全症にも使える? 2026年の現在地
大動脈弁狭窄症ではが広く行われていますが、純粋な大動脈弁閉鎖不全症は事情が異なります。 石灰化が少ないでは従来型TAVI弁を固定しにくく、弁の位置ずれや残存逆流が課題でした。 2025 でも、TAVIは手術不適格の選択されたAR患者に経験豊富な施設で検討する位置づけです。[1]
AR専用デバイス「Trilogy」のALIGN-AR
2025年にLancetで報告された拡大試験では、手術高リスクでの中等度~重症または重症AR 700例に、 AR専用に設計されたTrilogy弁を使用しました。技術的成功率は95%、1年全死亡率は7.7%でした。 一方、新規ペースメーカー植込みは評価可能589例中127例(21.6%)に必要でした。[7]
米国FDAは2026年3月17日、Trilogy Transcatheter Heart Valve Systemを承認しました。 FDA上の対象は、急性感染性心内膜炎・リウマチ性心疾患・急性大動脈解離によらない 症候性の重症native三尖大動脈弁逆流で、がの高リスク以上と判断した患者です。[8]
薬で大動脈弁閉鎖不全症の手術を先延ばしできる?
2025 では、手術が実施できない慢性重症で、や が症状改善に役立つ場合がある一方、 の中等度~重症ARで手術を遅らせる目的の薬物治療は有効性が確立していないとしています。[1]
つまり、血圧や心不全など併存状態に対する薬物治療は重要ですが、 手術基準に達した重症ARを「薬で数値だけ維持して待つ」という考え方は基本ではありません。
次の診察で確認したい「7つの数字」
の経過を患者さん自身が理解するには、診断名だけではなく、前回との変化を確認することが重要です。 検査結果に次の項目があれば、時系列で記録しておくと診察時の会話が具体的になります。
- AR重症度:軽度・中等度・重症のどこか
- (%):左室の収縮機能
- (mm):左室収縮末期径
- (mm/m²):体格補正したLVESD
- (mL/m²):体格補正した左室収縮末期容積
- ・:特にで定量される場合
- 大動脈基部・上行大動脈径(mm):弁だけでなく大動脈病変を併発していないか
「私は重症ARですか?」
「前回よりLVEF・LVESD・iはどう変わりましたか?」
「2025 のまたはIIbの基準に近づいていますか?」
「心エコーと症状が一致しない場合、CMRやは必要ですか?」
大動脈弁閉鎖不全症の手術時期についてよくある質問
大動脈弁閉鎖不全症は無症状でも手術が必要ですか?
重症ARでは、無症状でも左室機能や左室サイズが一定の基準に達すると手術が推奨されます。 2025 ESC/EACTSではLVEF ≤50%、LVESD >50 mm、LVESDi >25 mm/m²のいずれかがClass Iです。 低手術リスク例ではLVEF ≤55%、LVESDi >22 mm/m²、LVESVi >45 mL/m²もClass IIbの検討域です。
LVEFが55%なら心臓の機能は正常なので経過観察でよいですか?
ARでは単純に「55%だから問題ない」とは判断できません。 2025 ESC/EACTSでは、無症候性の重症ARで手術リスクが低い場合、LVEF ≤55%はClass IIbの手術検討指標の一つです。 LVESDi、LVESVi、症状、経時変化などと合わせて評価します。
LVESDが50 mmちょうどならClass Iですか?
2025 ESC/EACTSの無症候性重症ARにおけるLVESD基準は「>50 mm」です。 一方、LVEFは「≤50%」、LVESDiは「>25 mm/m²」です。 ただし境界値では測定誤差や体格、他の指標、経時変化も重要なため、1回の数値だけでは判断しません。
心臓MRI(CMR)は全員に必要ですか?
全員に必須とは限りません。心エコーが第一選択です。 ただし心エコー所見が食い違う、左室容積をより正確に測りたい、重症度や手術時期が境界、 心筋線維化など追加情報が必要、といった場合にCMRが有用です。
LVGLSが悪ければ手術したほうがよいですか?
現時点ではLVGLS単独で手術適応を決める基準にはなっていません。 2026年の研究ではCMR由来FT-LVGLSがガイドライン指標に追加の予後情報を与えることが示されましたが、 今後の検証が必要です。補助的なリスク層別化指標として考えるのが適切です。
大動脈弁閉鎖不全症でもTAVIを受けられますか?
選択された患者では検討されることがありますが、すべてのAR患者が対象ではありません。 2025 ESC/EACTSでは手術不適格の選択症例でTAVIを検討できる位置づけです。 米国では2026年にAR専用Trilogy弁が高手術リスクの症候性重症native三尖弁ARに承認されましたが、 日本国内の承認・適応・使用可否は別途確認が必要です。
専門用語をやさしく解説
本文中の青色+点線が付いた専門用語は、クリック・タップするとその場で意味を確認できます。ここでは記事に登場する主な用語をまとめて確認できます。
手術時期を考えるうえでは、「心臓がどれくらい血液を送り出せているか(LVEF)」と、 「左心室がどれくらい大きくなっているか(LVESD・LVESDi・LVESVi)」が重要です。 CMRやGLSなどは、それだけでは判断しにくいときに追加情報を与える検査・指標です。
心疾患情報 執筆・監修者
心疾患情報 執筆・監修
増田 将
株式会社増富 常務取締役
プロフィール
医療現場支援歴10年。循環器領域を中心に、カテーテル治療や心臓血管外科手術、 ステントグラフト内挿術などの医療現場支援に携わっています。
- 循環器内科カテーテル治療支援:3,000症例
- 心臓血管外科 弁膜症手術支援:700症例
- ステントグラフト内挿術支援:600症例
※「症例数」は医療行為を実施した件数ではなく、医療現場における治療・手術等の支援経験を示しています。 本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を行うものではありません。
発行元:株式会社増富
株式会社増富は1972年設立の医療機器関連企業です。 医療機器事業をはじめ、感染症対策、ヘルスケア、スポーツ、SDGs関連事業を展開しています。
発行元・株式会社増富の会社情報を見る
| 商号 | 株式会社 増富 MASUTOMI CO.,LTD |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役社長 増田 貴志 |
| 設立 | 1972年(昭和47年)1月 |
| 資本金 | 2,000万円 |
| 従業員数 | 18名(2026年10月現在) |
| 本社 | 〒606-8264 京都府京都市左京区北白川小倉町40番地13 TEL:075-722-3211 FAX:075-722-3218 |
| 舞鶴支社 | 〒625-0062 京都府舞鶴市森993番地 TEL:0773-62-0130 FAX:0773-62-0140 |
| 主な事業 | 医療機器事業、感染症対策事業、ヘルスケア事業、スポーツ事業、SDGs事業 |
| 法人番号 | 7130001007339 |
| インボイス登録番号 | T7130001007339 |
| 所属団体 | 日本医療機器販売業協会会員 京都総合医療器協議会会員 |
参考文献・最新ガイドライン
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Praz F, Borger MA, et al.
2025 ESC/EACTS Guidelines for the management of valvular heart disease. European Heart Journal. 2025;46(44):4635-4736. Published August 29, 2025.
DOI: 10.1093/eurheartj/ehaf194
ガイドラインを確認する -
日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会.
2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン. 2020年3月13日発行、2020年10月16日更新.
ガイドラインPDFを確認する -
日本循環器学会.
循環器病ガイドシリーズ 活動および発刊予定. 「弁膜症診療ガイドライン」2027年3月発表予定(2025-2026年度活動).
発刊予定を確認する -
Lopez Santi P, et al.
Left ventricular dilatation in patients with significant aortic regurgitation: association with outcome. European Heart Journal – Cardiovascular Imaging. 2025;26(8):1466-1474.
DOI: 10.1093/ehjci/jeaf165
論文を確認する -
Figliozzi S, et al.
Prognostic Value of Cardiovascular MRI in Asymptomatic Patients with Moderate-to-Severe Aortic Regurgitation: A Network Meta-Analysis. Radiology: Cardiothoracic Imaging. 2025;7(3):e240313.
DOI: 10.1148/ryct.240313
論文を確認する -
Li B, Liu Y, et al.
Left ventricular global longitudinal strain improves risk stratification in chronic aortic regurgitation. European Heart Journal – Cardiovascular Imaging. 2026;27(8):1513-1523. Published June 2, 2026.
DOI: 10.1093/ehjci/jeag135
論文を確認する -
Makkar RR, et al.
Transcatheter aortic valve implantation with the Trilogy valve for symptomatic native aortic regurgitation (ALIGN-AR): a pivotal, multicentre, single-arm, investigational device exemption study. Lancet. 2025;406(10521):2757-2771. Epub November 16, 2025.
DOI: 10.1016/S0140-6736(25)02215-9
PubMedで確認する -
U.S. Food and Drug Administration.
Premarket Approval (PMA) P250024: Trilogy Transcatheter Heart Valve System. Decision Date: March 17, 2026.
FDA承認情報を確認する
ACE阻害薬
ACEはAngiotensin-Converting Enzymeの略です。高血圧や心不全などで使われます。慢性重症ARで手術ができない患者の症状改善に役立つ場合があります。
ALIGN-AR試験
AR専用に設計されたTrilogy弁を用い、症候性のnative AR患者で安全性・有効性を評価した前向き多施設試験です。
AR(大動脈弁閉鎖不全症/大動脈弁逆流症)
ARはAortic Regurgitationの略です。心臓から大動脈へ送り出した血液の一部が、心臓が広がる時に左心室へ戻ってきます。長く続くと左心室が多くの血液を扱う必要があり、徐々に大きくなることがあります。
無症候性
大動脈弁閉鎖不全症では、心臓が負担に適応している間は息切れなどを感じにくいことがあります。そのため「症状がない」ことと「心臓に負担がない」ことは同じではありません。
AVR(大動脈弁置換術)
AVRはAortic Valve Replacementの略です。外科的に置換するSAVRなどがあり、弁の状態や患者の条件に合わせて治療法を選択します。
BNP
BNPはB-type Natriuretic Peptideの略です。心不全の評価でよく使われ、症状や画像検査と組み合わせて心臓への負担を判断する材料になります。
BSA(体表面積)
BSAはBody Surface Areaの略です。心臓の大きさを体格に合わせて評価する際に使います。本記事の簡易計算ではMosteller式でBSAを求めています。
Class I(クラス1)
治療や検査による利益が明確で、実施することが推奨される位置づけです。大動脈弁閉鎖不全症では、一定の条件を満たす重症ARの手術がClass Iに分類されています。
Class IIb(クラス2b)
有用である可能性はありますが、Class Iほど強く推奨される段階ではありません。個々の患者の条件やリスク、価値観を踏まえて判断する領域です。
心臓MRI(CMR)
CMRはCardiovascular Magnetic Resonanceの略です。左心室の容積やLVEF、逆流量・逆流率などを高い再現性で評価できます。造影剤を使う検査では、心筋の線維化を調べることもあります。
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬
高血圧治療などで使われる薬で、慢性重症ARで手術ができない場合の症状改善に用いられることがあります。
ESC / EACTS ガイドライン
ESCはEuropean Society of Cardiology、EACTSはEuropean Association for Cardio-Thoracic Surgeryの略です。多数の研究結果を評価し、どのような患者で検査や治療を考えるかを推奨度とともに示しています。
心筋線維化
線維化が進むと、心筋のしなやかな収縮や拡張に影響する可能性があります。CMRのLGEなどが評価の手がかりになることがあります。
FT-LVGLS(CMR feature trackingによる左室GLS)
FTはFeature Trackingの略で、CMR画像上の特徴点を追跡して心筋の変形を測ります。LVGLSは左心室のGlobal Longitudinal Strainを意味します。
GLS(Global Longitudinal Strain)
通常のLVEFが保たれていても、心筋の収縮の質が先に低下することがあります。GLSは、そのような細かな心筋機能の変化を捉えるために用いられる指標です。
Heart Team(ハートチーム)
弁膜症では、一つの診療科だけではなく、複数の専門家が検査画像、手術リスク、患者の希望などを共有して治療法を決めることがあります。
HR(ハザード比)
HRはHazard Ratioの略です。一般に1より大きい場合は比較対象よりイベント発生の速さが高い方向、1より小さい場合は低い方向を示します。
LGE(遅延造影)
LGEはLate Gadolinium Enhancementの略です。造影剤を使用し、正常な心筋とは性質が異なる部分が遅れて強く見える性質を利用します。
LVEDD(左室拡張末期径)
LVEDDはLeft Ventricular End-Diastolic Diameterの略です。慢性ARでは左心室へ戻る血液が増えるため、拡張末期の左心室が大きくなることがあります。
LVEF(左室駆出率)
LVEFはLeft Ventricular Ejection Fractionの略です。心臓のポンプ機能を表す数値として広く使われています。大動脈弁閉鎖不全症では逆流分も含めて血液を送り出すため、LVEFが一見保たれていても左心室への負担が進んでいる場合があります。
LVESD(左室収縮末期径)
LVESDはLeft Ventricular End-Systolic Diameterの略です。慢性ARでは逆流による容量負荷が続くことで左心室が拡大することがあり、その変化を追う代表的な指標です。
LVESDi(左室収縮末期径係数)
LVESDiはLVESDを体表面積(BSA)で割って求めます。同じLVESDでも、小柄な人と大柄な人では意味が異なるため、体格補正することで比較しやすくします。
LVESV(左室収縮末期容積)
LVESVはLeft Ventricular End-Systolic Volumeの略です。LVESDが「直径」を見るのに対し、LVESVは左心室全体の「容積」を見ます。
LVESVi(左室収縮末期容積係数)
LVESViは収縮後に左心室へ残る血液量をBSAで割った値です。左心室の形は単純な球ではないため、直径だけでなく容積も評価することで心室拡大をより立体的に捉えられます。
native AR(自己弁の大動脈弁逆流)
nativeは「もともとの自分の弁」という意味です。過去に人工弁を入れた後の問題とは区別して使われます。
NYHA心機能分類
NYHA Iは通常の身体活動で症状が出ない状態、IIは通常の活動で軽い症状が出る状態を指します。III・IVになるほど活動制限が大きくなります。
PM(ペースメーカー)
TAVIなど弁治療の後に刺激伝導系へ影響が出ると、新たに永久ペースメーカーが必要になることがあります。
無作為比較試験
患者背景の偏りをできるだけ減らし、治療間の差を評価するために用いられます。
逆流率(Regurgitant Fraction)
逆流量を、弁を通って送り出された総量との関係で割合にした指標です。CMRなどで定量評価されることがあります。
逆流量(Regurgitant Volume)
通常はmLで表します。逆流する血液量が多いほど、左心室が余分な血液を処理する負担が大きくなります。
SAVR(外科的大動脈弁置換術)
SAVRはSurgical Aortic Valve Replacementの略です。心臓外科手術として行われ、患者の年齢、弁の形、大動脈病変などを踏まえて治療法を選びます。
単群試験
比較のための別グループを同時に置かず、治療後の成績があらかじめ設定した基準を満たすかなどを調べます。
運動負荷試験
歩行や自転車運動などで心臓に一定の負荷をかけ、息切れ、血圧、心電図、運動能力などを評価します。「無症状」と思っていても運動時に症状が明らかになることがあります。
症候性
大動脈弁閉鎖不全症では、労作時の息切れ、動悸、疲れやすさなどが症状としてみられることがあります。
TAVI / TAVR(経カテーテル大動脈弁治療)
TAVIはTranscatheter Aortic Valve Implantation、TAVRはTranscatheter Aortic Valve Replacementの略で、ほぼ同じ治療を指します。大動脈弁狭窄症では広く行われていますが、純粋なARでは弁を固定しにくいことなどが課題でした。
