株式会社増富

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ファロー四徴症

先天性心疾患

ファロー四徴症の概要

ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot:TOF)は、心臓の先天性疾患の約5-10%、チアノーゼ性心疾患の60~70%を占め、染色体22q11.2欠失症候群の合併が多い先天性心疾患です。ファロー四徴症は、心室中隔欠損(VSD)、肺動脈狭窄(PS)、大動脈騎乗(OA)、右心室肥大(RVH)の4つの特徴をもっており、以下は構成される4つの特徴です。

心室中隔欠損(VSD)

心室の間に存在する壁(心室中隔)に穴が開いています。

肺動脈狭窄(PS)

肺動脈が狭くなり、血液が肺に十分に送られなくなります。

大動脈騎乗(OA)

大動脈が正常な位置ではなく、心室中隔欠損の上に位置しています。

右心室肥大(RVH)

右心室の筋肉が通常よりも厚くなります。
これらの異常は、胎児の心が発達する過程で、動脈幹とその円錐部が正常に分かれないことに起因しています。この結果、血液の流れが正常でなくなり、体への酸素供給が適切でなくなります。特に、肺動脈狭窄により、肺への血流が制限され体内の酸素濃度が低下し、チアノーゼの症状を呈します。

ファロー四徴症の種類

ファロー四徴症は、その名の通り、心室中隔欠損(VSD)、肺動脈狭窄(PS)、大動脈騎乗(OA)、右心室肥大(RVH)という4つの異常から成り立っています。その臨床的な表現や重症度は患者によって異なり、それぞれの病態によって治療のアプローチを考える必要があります。以下は、ファロー四徴症の病態の種類の特徴です。

古典的なファロー四徴症

これは最も一般的な形で、4つの異常な特徴すべてを含んでおり、肺動脈狭窄が血液の肺への流れを制限し、心室中隔欠損を通じて酸素が少ない血液が全身に送られ、チアノーゼを引き起こします。

ピンクTOF

軽度の肺動脈狭窄を特徴とし、チアノーゼはあまり顕著に現れません。血液が比較的自由に肺を通過できるため、酸素化が比較的正常に近い状態です。

極型ファロー四徴症

肺動脈が非常に狭く、または完全に閉塞している状態です。この場合、血液は主に心室中隔欠損を通じて体に送られ、非常に強いチアノーゼを引き起こします。特に新生児期に重篤な状態を引き起こす可能性があります。

ファロー四徴症と肺動脈閉鎖

肺動脈が存在せず、血液は体から肺へ流れるための通常の経路がない状態です。この場合、血液は体の他の部分から肺へ流れる迂回路を必要とします。

ファロー四徴症と大動脈右側弓

通常大動脈は心臓の左側から出ていますが、右側から出ている状態で、手術時に特別な配慮を必要とします。

ファロー四徴症と追加の心臓の異常

ファロー四徴症と他の心臓の異常が一緒に見られることがあり、心房中隔欠損(ASD)、心耳瘤、または冠動脈の異常などが含まれる可能性があります。

ファロー四徴症 発症の原因

ファロー四徴症は、先天性心疾患の1つであり、胎児期の心臓発育中の異常に起因し、遺伝的要因や妊娠中の環境要因が関与している可能性があります。原因は多岐にわたりますが主に以下の原因が考えられます。

発生学的要因

ファロー四徴症は、胎児の心臓が発育する過程で、動脈幹とその円錐部が正常に分かれないことに起因しています。この異常な分化と分割は、心室中隔欠損と肺動脈狭窄を引き起こします。

遺伝的要因

ファロー四徴症の発症には、遺伝的要因が関与していると広く認識されており、特定の遺伝子変異や染色体異常がこの疾患の発症リスクを高める可能性があります。特に染色体22番の長腕のq11.2領域の欠失を示す22q11.2欠失症候群は、ファロー四徴症と関連があることが知られています。

環境要因

妊娠中の母親が特定の環境要因に曝露することも、胎児の心臓発育に影響を与える可能性があります。これには、特定の薬物(例えば、抗てんかん薬)、アルコール、または母親が糖尿病を持っている場合などが含まれます。

ファロー四徴症の症状

ファロー四徴症は、生後2~3ヶ月の時期に徐々にチアノ-ゼの症状が出現し、入浴や排便時などの泣いたりいきんだりしたときに強くチアノーゼが現れます。乳幼児では泣いたあとチアノ-ゼと呼吸困難が強くなる発作(無酸素発作)を起こすことがあり注意が必要です。

チアノーゼとは、毛細血管内血液の還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上になると皮膚・粘膜の青紫色などの変化が出現します。チアノーゼを放置すると心不全症状が悪化し様々な合併症を引き起こす可能性があります。以下は主なファロー四徴症の症状です。

心不全症状

  • チアノーゼ
  • 呼吸困難(特に労作時呼吸困難)
  • 疲労感
  • 体重増加

チアノーゼの発作

チアノーゼの発作とは、過呼吸発作、易刺激性および長時間の啼泣、チアノーゼの増強、心雑音の減弱または消失を特徴とする症状のことです。この発作は生後2~4カ月の乳児に最も多くみられます。重度の発作では、ぐったりしたり、痙攣が起きたりするほか,ときに死に至ることもあるので注意が必要です。

ばち状指

ばち状指とは、指先が太鼓のバチのように丸く膨らんでいる状態を指し、指先に血流のうっ滞があるとき、局所の栄養状態がよくなって組織が増殖、肥厚し、これが太鼓バチ状になった場合である。 チアノーゼを伴う先天性心疾患でよくみられ、長期間にわたる低酸素血症の結果として起こります。

ファロー四徴症の診断

ファロー四徴候は、通常生後まもなく心雑音で気づかれることが多く、心エコー検査で確定診断がつきます。疾患の重症度にもよりますが、未治療で成人に達するのは10人に1人程度の割合であり、早期診断することが重要です。

聴診

医師は胸部を聴診することで心音を聞き取ることができます。ファロー四徴候の場合、出生後2ヶ月までの間に通常比較的大きな心雑音が聴取されることが多いです。

心電図検査

心電図は心臓の電気的な活動を記録する検査です。ファロー四徴候の場合、右軸偏位、右室肥大などの心電図波形が見られることがあります。

胸部X線検査

胸部X線は、心臓のサイズや形状、肺の血流の状態を評価します。ファロー四徴候の場合、肺動脈の低形成によって起こる第2弓陥凹と心尖部挙上により木靴型と肺血管陰影の減弱が認められ、25%で右大動脈弓がみられることがあります。

心エコー検査

心エコー検査は、心臓の詳細な画像を提供する非侵襲的な検査です。ファロー四徴候の確定診断には、心エコー検査が用いられます。心臓の構造と血流を視覚化し、狭くなっている弁の開口部と弁を通る血液量を描出できるため、形態診断や重症度を評価できます。ファロー四徴候の場合は、心室中隔欠損、肺動脈低形成、大動脈騎乗、右室流出路狭窄の4点がみられます。

心カテーテル検査

心臓カテーテル検査は、心臓に細い管(カテーテル)を挿入し、直接心臓内部の圧力や血液の流れを測定する検査です。ファロー四徴候の場合、肺動脈の正確な形態や、心室中隔欠損の位置、冠動脈の走行、冠動脈奇形の有無などを術前に精査するために心臓カテーテル検査が行われることがあります。

ファロー四徴症の保存的治療・対症療法

ファロー四徴症は、疾患の重症度にもよりますが、チアノ-ゼの進行によって多血症や脳梗塞、脳膿瘍などの合併症を来すため、根治するためにも積極的な早期の外科治療が望まれます。

ファロー四徴症は、通常生後すぐまたは生後数ヶ月以内に手術を必要とする複雑な先天性心疾患です。しかし、手術が即座に行えない状況や、手術を待っている間、または手術を選択しないケースにおいては、保存的治療や対症療法が重要な役割を果たします。

薬物療法

チアノーゼの発作を抑えるために心拍数を減少させ、心筋の酸素需要を減少させるβ遮断薬を使用することがあります。新生児の低酸素症に対して早期動脈管閉鎖が主病態の場合は、一時的に血流を改善する目的で動脈管を開放状態に保持するプロスタグランジン療法が第1選択として行われます。プロスタグランジンE1の静脈点滴により動脈管を開いた状態に保つことで大動脈から肺動脈へ血液が流れて肺血流量が増加し、酸素の豊富な血液が全身に流れます。プロスタグランジンE1の持続点滴により状態が不安定になることがあるため、薬の投与中は綿密にモニタリングを行う必要があります。

心不全の管理

心不全の症状を軽減するために、利尿剤(利尿作用を持つ薬)心臓の収縮を改善する薬(降圧薬)などが使用される場合があります。これらの薬物は症状の改善や心機能の安定化に役立ちます。

呼吸困難の管理

チアノーゼは酸素飽和度の低下を示し、これが組織への酸素供給不足につながります。呼吸困難がある場合、酸素療法を行い、酸素飽和度を改善し呼吸困難の症状を軽減します。

栄養療法

特に新生児や乳児の場合、ファロー四徴症によるカロリー消費の増加や哺乳中の息切れにより適切な栄養摂取が困難な場合があります。栄養士と連携して、カロリー密度の高い食事などの特別な栄養サポートが重要になります。

心理的サポート

出性後より、長期的フォローが必要な先天性心疾患と向き合う上での患者家族への心理的サポートが必要です。

ファロー四徴症の外科的治療法(手術について)

治療の基本は、心臓手術です。

チアノーゼの強い症例やチアノーゼ発作を起こす症例では、乳児期に低酸素血症を改善するために、手に血液を送る動脈(鎖骨下動脈)と肺動脈をバイパスする姑息的な手術であるブラロック・トーシッヒ短絡手術(BTシャント)が行われます。その後心臓の血液の流れを修復する目的で、1歳前後に心室中隔欠損を閉鎖して狭い右室流出路を拡大形成する心内修復術が行われます。

ファロー四徴症の心内修復術は、通常生後1歳前後に行われることが多く、狭い右室流出路の手術法に自分の肺動脈弁を残す方法(自己弁温存法)、右室流出路にパッチと呼ばれる膜を当てて拡大形成する方法(右室流出路パッチ拡大術)、人工血管などの導管を使って右室から肺動脈へ通路を作成する方法(ラステリ手術)の3通りがあります。特に肺動脈閉鎖をともなう場合にはラステリ手術が行われます。この場合はある程度成長した1歳半から2歳前頃に手術が実施されます。

ファロー四徴症(外科的手術)手技手順

手術方法は症例によって異なりますが、一般的なファロー四徴症の手術は、①心室中隔欠損閉鎖術と②右室流出路形成を行います。

  1. 開胸:全身麻酔下にて、執刀医のDrが開胸を行います。
  2. 体外循環開始:手術中の心臓と肺の役割を人工心肺という外部の装置に任せます。心筋保護液という薬剤を心臓に流し、心臓の拍動を停止させ、心臓の動きを完全に停止させます。
  3. 心室中隔の修復:心臓を切り開き、心房中隔の修復を行います。必要に応じて自己心膜やゴアテックスパッチやフェルトなどを使い、心筋の修復が行われます。
  4. 右室流出路形成:右室流出路にパッチと呼ばれる膜を当てて拡大形成する方法(右室流出路パッチ拡大術)、人工血管などの導管を使って右室から肺動脈へ通路を作成する方法(ラステリ手術)などを行います。
  5. 心臓機能の回復:切り開いた心臓を縫合し、心臓を拍動させた後、人工心肺を停止し、心臓の動きが自然に回復することを確認します。
  6. 閉胸:患者様の全身状態に注意しながら閉胸し、手術終了です。

入院~退院後の流れと、リハビリについて

心臓手術を受ける患者の入院から退院後に至るまでのプロセスと、心臓リハビリテーションについては以下のリンクをご参照ください。
入院中のケアから、退院後の生活への適応、そして心臓リハビリテーションを通じての健康回復と生活質の向上に至るまで、ご紹介しています。

よくある質問

こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。

ファロー四徴症とは何ですか?

ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot:TOF)は、心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗、右心室肥大の4つの特徴を持つ先天性心疾患です。

ファロー四徴症の主な症状は何ですか?

主な症状にはチアノーゼ、呼吸困難、疲労感、心不全症状があります。

ファロー四徴症の原因は何ですか?

原因は遺伝的要因や環境要因が関与する可能性があり、発生学的要因には動脈幹とその円錐部が正常に分かれないことが含まれます。

ファロー四徴症の診断方法にはどのようなものがありますか?

診断方法には心電図、胸部X線、心エコー検査があり、これらにより病態の特定と重症度の評価が行われます。

ファロー四徴症の治療方法はどのようなものがありますか?

外科的治療には心室中隔欠損閉鎖術や右室流出路形成があり、これにより血液の流れと酸素供給の改善が図られます。また、薬物療法や対症療法も重要です。

関連記事

【参考文献】

・日本心臓血管外科学会
https://jscvs.or.jp/surgery/4_3_syujutu_sinzou_faro/

・一般社団法人 日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf

・一般社団法人 日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_ichida_d.pdf

心疾患情報執筆者

心疾患情報執筆者

増田 将

株式会社増富 常務取締役

プロフィール

医療現場支援歴:10年
《主な業務歴》
・医療現場支援歴:10年
・循環器内科カテーテル治療支援:3,000症例
・心臓血管外科弁膜症手術支援 :700症例
・ステントグラフト内挿術支援 :600症例

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