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心臓腫瘍の最新診断と治療|心臓MRI・CT・PETで何がわかる?

その他心疾患

心臓に「腫瘤」が見つかっても、それが直ちに 「がん」を意味するわけではありません。 現在は心エコーだけで判断するのではなく、 心臓MRI(CMR)、心臓CT、FDG-PETなどを組み合わせ、 腫瘍・血栓・炎症などを段階的に見分けていく マルチモダリティ画像診断が重視されています。

公開・最終更新:2026年10月6日

この記事の結論

心臓腫瘍の診断で重要なのは、 「心臓に何かある」ことを確認するだけではなく、 それが本当に腫瘍なのか、血栓などの腫瘍以外の病変なのか、 悪性を疑う特徴があるのか、周囲へ浸潤していないかまで 評価すること です。

2024年のJACC: CardioOncologyのレビューでは、 心エコーを初期評価、心臓MRI(CMR)を 非侵襲的診断の中心と位置づけ、 CTやPETを目的に応じて組み合わせる マルチモダリティ診断が整理されています。 [2]

さらに2026年の前向き研究では、 悪性心臓腫瘤を判別する単独検査として CMRが最も高い診断精度を示しました。 [1]

POINT 01 腫瘤=腫瘍ではない

心臓内の血栓、炎症性病変、 正常な解剖構造などが腫瘍のように 見える場合があります。

POINT 02 CMRが重要

形だけではなく組織の性質、 造影パターン、周囲への浸潤などを 詳しく評価できます。

POINT 03 PETは必要時に追加

CMR等で判断が難しい場合や、 悪性腫瘍の全身評価・病期評価などで 有用な場合があります。

心臓に「腫瘤」が見つかっても、 腫瘍とは限らない

近年の心臓腫瘍診療で重要なのが、 「cardiac tumor(心臓腫瘍)」と 「cardiac mass(心臓腫瘤)」を 最初から同じものとして扱わない という考え方です。

心エコー、CT、MRIなどで 心臓の中や周囲に「塊」が確認されたとしても、 その正体は腫瘍とは限りません。 [2]

心臓腫瘤として鑑別されるものには、 例えば次のようなものがあります。

  • 心臓内に形成された血栓
  • 感染性心内膜炎などに伴う疣贅
  • 炎症性病変
  • 正常な心臓構造が腫瘤のように見えるもの
  • 良性心臓腫瘍
  • 原発性悪性心臓腫瘍
  • 他臓器の悪性腫瘍からの心臓転移

そのため画像検査で 「心臓にできものがあります」 と指摘された段階では、 まだ診断の入口である場合があります。

なぜ「腫瘤の正体」を見極める必要があるのか
血栓と腫瘍では治療方針がまったく異なります。 さらに腫瘍であっても、 良性腫瘍、肉腫、リンパ腫、 転移性腫瘍などによって 必要な治療が大きく変わります。

2026年現在、心臓腫瘍は どのように診断する?

心臓腫瘍の診断では、 1種類の画像検査ですべてを判断するのではなく、 それぞれ特徴の異なる検査を組み合わせます。

2024年のJACC: CardioOncologyのレビューでは、 心臓腫瘤の診断において 心エコー、CMR、CT、PETを 段階的に使用する考え方が整理されています。 [2]

  1. 心エコーで腫瘤の存在・位置・動きを確認
    腫瘤の大きさや可動性だけでなく、 心臓内の血流障害、 弁への影響、 心臓機能なども評価します。
  2. 心臓MRI(CMR)で組織の性質を評価
    血栓との鑑別、 組織性状、 造影パターン、 心筋・心膜など周囲組織への 浸潤の有無を詳しく評価します。
  3. 必要に応じて心臓CTを追加
    石灰化、冠動脈との位置関係、 周囲構造との関係、 手術前の解剖学的評価などに役立ちます。
  4. 診断困難例や悪性が疑われる場合にFDG-PET
    腫瘤の代謝活動や 心臓以外の病変・転移、 原発巣の検索などに利用されます。
  5. 必要な場合に病理診断
    治療方針を決めるために 組織型の確定が必要な場合には、 生検または手術で採取した組織を 病理学的に調べます。
検査 主にわかること 特徴 主な位置づけ
心エコー 腫瘤の位置、大きさ、動き、 血流への影響 迅速かつ低侵襲で、 心機能も同時に評価できる 初期評価として 使用されることが多い
心臓MRI
(CMR)
組織性状、血栓との鑑別、 造影パターン、浸潤 軟部組織の性状評価に優れる 非侵襲的な詳細評価の中心
心臓CT 石灰化、周辺構造、 冠動脈との関係など 空間分解能が高く 解剖学的評価に有用 CMRを補完
FDG-PET/CT 代謝活動、 心臓以外の病変、 病期評価 全身を同時に評価できる 選択された症例で追加
病理検査 腫瘍の組織型 組織を直接確認する 必要な症例で実施

2026年の研究で示された CMR・CT・PETの診断精度

2026年に JACC: Cardiovascular Imaging で発表された前向き研究では、 心臓腫瘤が疑われた142例について、 心エコー、心臓CT、CMR、 18F-FDG PETによる 悪性判別性能が比較されました。 [1]

この研究では142例中54%が 悪性心臓腫瘤でした。

悪性心臓腫瘤を判別する診断精度
AUC:1.0に近いほど、この研究集団における 悪性判別性能が高いことを示します
心エコー 0.77
心臓CT 0.85
FDG-PET 0.85
心臓MRI 0.94
CMR + FDG-PET
AUC 0.97

この研究集団では、 CMRが単独検査として最も高い 悪性判別性能 を示しました。

またCMRとFDG-PETを組み合わせた場合には AUC 0.97となり、 悪性症例はすべて正しく同定されました。 一方で良性病変を悪性と判定した 偽陽性例も確認されています。 [1]

「CMR+PETを全員に行えばよい」 という意味ではありません。 この研究ではCMR+PETとCMR単独の AUC差は統計学的に有意ではありませんでした。 PETはCMRやCTだけでは判断しにくい症例などで、 追加情報を得る目的で使用することが重要です。
2026年時点での実践的な考え方
「検査を多く行うほど良い」ではなく、 心エコーで発見した後、 CMRを中心に腫瘤の性状を評価し、 疑問が残る部分をCT・PET等で補完するという 段階的診断が合理的です。

画像から「悪性の可能性」を どのように判断する?

画像検査だけで 良性・悪性を100%確定できるわけではありません。

しかし、 心エコー、CMR、CT、PETによって得られる 複数の特徴を組み合わせることで、 悪性腫瘍を疑う可能性を評価できます。

JACC: CardioOncologyのレビューでは、 悪性を疑う際に確認する画像上の特徴として、 周辺組織への浸潤、腫瘤の不均一性、 不整な形態、広い付着部、 心膜液など複数の所見を 総合する重要性が示されています。 [2]

CMRでは、 腫瘤内部の組織性状、 血流、 造影効果、 心筋や心膜への浸潤などを 詳しく評価できます。

PETで強く光る=必ずがん、 ではありません。 炎症性疾患などでも FDG集積が高くなる場合があります。 PETの結果だけで悪性と判断するのではなく、 CMR、CT、臨床経過などを含めて 総合的に評価します。

心臓腫瘍では生検を必ず行う?

すべての心臓腫瘍で、 手術前に必ず生検を行うわけではありません。

病理診断は腫瘍の種類を確定するうえで 非常に重要ですが、 心臓は常に動いており、 腫瘍の位置や形状によっては 生検に出血、塞栓、不整脈などの リスクを伴う可能性があります。

そのため、 画像所見、 腫瘍の位置、 患者さんの状態、 手術適応、 疑われる疾患によって 生検の必要性を判断します。 [2]

一方、 原発性心臓リンパ腫など 組織型によって治療内容が大きく変わる疾患 では、 安全な方法で病理診断を得ることが 特に重要になります。

心臓腫瘍は種類によって 治療戦略が大きく異なる

心臓粘液腫などの良性腫瘍

良性腫瘍であっても、 腫瘍の大きさ、位置、可動性によっては 心臓内の血流を妨げたり、 弁機能に影響したり、 塞栓症の原因となったりすることがあります。

症状や塞栓・閉塞リスクなどを踏まえて 手術適応があると判断された場合には、 外科的切除が検討されます。

原発性心臓肉腫

心臓肉腫では、 腫瘍の位置、 周囲組織への浸潤、 遠隔転移、 完全切除の可能性などを評価し、 治療方針を決定します。

2025年の JACC: CardioOncologyのレビューでは、 心臓や大血管に発生する肉腫は 治療計画が複雑であり、 手術・薬物療法などを含む マルチモダリティ治療 が必要になる場合があるとされています。 [3]

また肉腫治療で使用されることのある アントラサイクリン系抗がん薬などには 心毒性の問題もあるため、 腫瘍治療だけでなく心機能の評価・管理も 重要になります。 [3]

原発性心臓リンパ腫

原発性心臓リンパ腫では、 心臓肉腫や粘液腫とは 治療戦略が異なります。

2025年に報告された 121例の解析では、 化学療法を受けた症例が多く、 研究全体では 化学療法が生存改善に重要である と報告されています。 [4]

一方で、 心臓内の血流を著しく妨げているなど 血行動態が不安定な場合には、 症例によって手術的介入が必要となることもあります。 [4]

「心臓に腫瘍がある=すぐに切除」 ではありません。
粘液腫、肉腫、リンパ腫、 転移性腫瘍では治療方針が異なります。 そのため、 画像診断と必要に応じた病理診断によって 腫瘍の種類を見極めることが重要です。

心臓粘液腫と遺伝 ― Carney複合では長期管理が重要

心臓粘液腫の多くは孤発性ですが、 一部は遺伝性疾患である Carney複合(Carney complex) と関連します。

2024年に報告された Carney複合患者38例を対象とした研究では、 24例に心臓粘液腫が発生し、 その24例のうち 13例(54.1%)に少なくとも1回の再発 が確認されました。 [5]

これはあくまで Carney複合患者を対象とした研究結果 であり、 一般的な孤発性心臓粘液腫の 再発率を示すものではありません。

若年発症、 多発性、 複数回の再発、 家族歴などがみられる場合には、 遺伝性疾患の可能性も考慮しながら 長期フォローを行うことがあります。

心臓腫瘍が疑われたとき、 専門施設で重要になること

心臓腫瘍は症例数が少なく、 同じ「心臓の腫瘤」であっても 診断・治療方針が大きく異なります。

とくに診断が難しい場合や 悪性腫瘍が疑われる場合には、 1つの診療科だけではなく 複数領域が連携して評価することが重要です。

  • 循環器内科
  • 心臓血管外科
  • 放射線診断科
  • 病理診断科
  • 腫瘍内科・血液内科
  • 放射線治療科
  • 必要に応じて遺伝診療部門

「どの画像検査を追加するのか」 「生検を行うのか」 「手術を優先するのか」 「薬物療法を中心にするのか」 といった判断を、 腫瘍の種類と患者さんの状態に合わせて 個別に決定します。

心臓腫瘍の最新診療で 押さえておきたい3つのポイント

1.「発見」から「組織性状の評価」へ

心エコーで腫瘤の存在を確認するだけではなく、 CMRなどを使用して 「何からできている可能性が高いのか」 「周囲へ浸潤しているのか」まで 評価することが重要です。

2.すべての検査を一律に行うのではなく、 段階的に選択する

心エコー、 CMR、 CT、 PETにはそれぞれ異なる役割があります。 診断上の疑問に合わせて 必要な検査を追加することが重要です。

3.「腫瘍の場所」だけではなく 「腫瘍の種類」に合わせて治療する

良性腫瘍では外科的切除が中心になる場合がありますが、 リンパ腫では化学療法が重要です。 肉腫では手術や薬物療法などを組み合わせた 集学的治療が検討されることがあります。

心臓腫瘍についてよくある質問

心臓に腫瘤が見つかったら、 がんということですか?

いいえ。 心臓に見つかった腫瘤には 良性腫瘍・悪性腫瘍だけでなく、 血栓や炎症性病変なども含まれます。 心エコーだけでは判断が難しい場合には、 CMRやCTなどを組み合わせて評価します。

心臓腫瘍ではMRIとPETの どちらが重要ですか?

役割が異なるため、 単純にどちらか一方が常に優れているとはいえません。 CMRは非侵襲的な組織性状評価の中心となる検査です。 PETはCMR等で判断しにくい場合や、 全身の病変・病期を評価したい場合などに 追加されることがあります。

心臓腫瘍では生検が必要ですか?

すべての症例で必要とは限りません。 腫瘍の位置、 生検に伴うリスク、 画像所見、 治療方針などを考慮します。 一方、 リンパ腫など組織型によって 治療が大きく変わる疾患では 病理診断が特に重要です。

良性の心臓腫瘍でも 手術が必要ですか?

良性でも、 血流を妨げる、 弁の動きを障害する、 塞栓症を起こす危険があるなどの場合には 手術が検討されます。 腫瘍の種類、 大きさ、 場所、 可動性、 症状などを総合して判断します。

心臓腫瘍は何科を 受診すればよいですか?

まず循環器内科や心臓血管外科で 評価されることが一般的です。 悪性腫瘍が疑われる場合には、 腫瘍内科・血液内科、 放射線科、 病理診断科などを含めて 治療方針を検討することがあります。

心臓腫瘍は画像検査だけで 良性・悪性を確定できますか?

画像検査によって 良性・悪性の可能性を推定できる場合がありますが、 すべての症例を画像だけで 確定できるわけではありません。 必要な場合には 生検や手術で得た組織を 病理学的に調べて最終診断を行います。

心疾患情報 執筆・監修者

心疾患情報 執筆・監修者 増田将

心疾患情報 執筆・監修

増田 将

株式会社増富 常務取締役

プロフィール

医療現場支援歴10年。 循環器領域を中心に、 カテーテル治療や 心臓血管外科手術、 ステントグラフト内挿術などの 医療現場支援に携わっています。

  • 循環器内科カテーテル治療支援: 3,000症例
  • 心臓血管外科 弁膜症手術支援: 700症例
  • ステントグラフト内挿術支援: 600症例

※「症例数」は医療行為を実施した件数ではなく、 医療現場における治療・手術等の 支援経験を示しています。 本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、 個別の診断や治療を行うものではありません。

PUBLISHER

発行元:株式会社増富

株式会社増富は1972年設立の医療機器関連企業です。 医療機器事業をはじめ、 感染症対策、ヘルスケア、 スポーツ、SDGs関連事業を展開しています。

株式会社増富 公式サイト

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商号 株式会社 増富
MASUTOMI CO.,LTD
代表者 代表取締役社長 増田 貴志
設立 1972年(昭和47年)1月
資本金 2,000万円
従業員数 18名(2026年10月現在)
本社 〒606-8264
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舞鶴支社 〒625-0062
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主な事業 医療機器事業、 感染症対策事業、 ヘルスケア事業、 スポーツ事業、 SDGs事業
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毒物劇物一般販売業登録 (第50041号)
古物商許可 (第611081030015号)

参考文献・最新研究

  1. Angeli F, et al. Diagnostic Accuracy of an Integrated Multimodality Imaging Approach in Patients With Cardiac Masses. JACC: Cardiovascular Imaging. 2026.
    DOI: 10.1016/j.jcmg.2026.03.014
    論文を確認する
  2. Angeli F, et al. Multimodality Imaging in the Diagnostic Work-Up of Patients With Cardiac Masses: JACC: CardioOncology State-of-the-Art Review. JACC: CardioOncology. 2024;6(6):847-862.
    DOI: 10.1016/j.jaccao.2024.09.006
    論文を確認する
  3. Lefler DS, et al. Sarcoma: Cardiovascular and Oncologic Considerations: JACC: CardioOncology State-of-the-Art Review. JACC: CardioOncology. 2025;7(7):800-815.
    DOI: 10.1016/j.jaccao.2025.09.005
    論文を確認する
  4. Zhuang S, et al. Primary cardiac lymphoma: a clinicopathological study of 121 cases. Frontiers in Oncology. Published January 7, 2025.
    DOI: 10.3389/fonc.2024.1509100
    PubMedで確認する
  5. Cardiac Myxomas in Carney Complex: Single Institution Multidecade Experience. The Annals of Thoracic Surgery. 2024;118(6):1216-1223.
    DOI: 10.1016/j.athoracsur.2024.07.037
    PubMedで確認する
医療情報について: 本記事は心臓腫瘍に関する 一般的な医学情報の提供を目的としています。 実際の診断・治療方法は、 腫瘍の種類、位置、大きさ、症状、 年齢、基礎疾患、検査結果などによって異なります。 本記事のみで自己診断・治療判断を行わず、 症状や検査結果については 循環器内科、心臓血管外科などの 医療機関へご相談ください。