株式会社増富

高度管理医療機器等販売業 許可番号 第100327号

  • 心臓の基礎
  • 心疾患の基礎
  • 不整脈
  • 虚血性心疾患
  • 心臓弁膜症
  • 大動脈疾患
  • 先天性心疾患
  • その他心疾患
  • 心臓手術
  • 入院~退院後の流れ

心筋症

その他心疾患

心筋症の概要

心筋症は、心筋(心臓の筋肉)の変性によって心機能障害をきたす疾患の総称を指します。心筋症は、心機能障害を伴う原因がはっきりしない心筋疾患(心筋症)と特定の心臓疾患や全身疾患に続発する心筋疾患(特定心筋症)に分類されます。心筋にダメージを引き起こす心筋症の原因は多岐にわたります。この症状が進行すると、心臓は血液を全身に効率よく送り出せなくなります。その結果、心不全や他の心臓関連の合併症を引き起こす可能性がありますが、適切な診断と治療によって、症状の軽減と合併症を未然に防ぐことができます。心臓の健康については定期的な検診と必要に応じた治療が重要です。

心筋症の分類

心筋症には、心機能障害を伴う原因がはっきりしない心筋疾患(心筋症)と特定の心臓疾患や全身疾患に続発する心筋疾患(特定心筋症)に分類され、さらに原因が不明の突発性心筋症には大きく分けて3つの種類があります。

拡張型心筋症

 心筋が薄くなり、収縮する力も弱くなって、結果、心臓の内腔が異常に大きく拡大することで心室の収縮不全や心不全を起こすことがあります。

肥大型心筋症

 心筋が異常に肥大し厚くなり、左室流出路閉塞(閉塞性肥大型心筋症:HOCM)を伴うこともあります。

拘束型心筋症

心室の拡張や肥大を伴わないことが特徴で、見た目の心臓の機能は正常ですが、心筋が硬くなることで拡張障害となり、心不全症状が起こります。拘束型心筋症の有効な治療方法はまだ確立されていません。

心筋症 発症の原因

心筋症は、原因不明の心筋疾患から心臓疾患や全身疾患に続発する心筋疾患に分類され、心筋症の発症原因は多岐にわたります。一般的に以下のような原因が考えられます。

遺伝的要因

特に肥大型心筋症(HCM)などは、家族歴がある場合が多く、遺伝子の突然変異が原因となることがあります。

炎症と感染

ウイルス性心筋炎など、心筋に炎症を引き起こす感染症が心筋症を引き起こすことがあります。

高血圧

持続的な高血圧は心筋に過度な負荷をかけ、拡張型心筋症や肥大型心筋症のリスクを高めます。

代謝性疾患

糖尿病、甲状腺疾患、肥満などの代謝性疾患も心筋症のリスクを高める可能性があります。

自己免疫疾患

ループス、リウマチ性疾患などの自己免疫疾患も心筋に影響を与える可能性があります。

ストレス

極度の物理的または感情的ストレスが、一時的に心筋症を引き起こす「ストレス誘発性心筋症(壊死しない心筋梗塞)」もあります。

その他

  • ・妊娠中や出産後に心筋症を発症することがある疾患が「妊娠性心筋症」です。
  • ・過度なアルコール摂取や一部の薬物(例:抗がん剤、一部の抗精神病薬)も心筋症のリスクを高めること が知られています。
  • ・血液障害(例:地中海貧血)や長期の鉄剤治療が原因で、心筋に鉄が蓄積することがあります。

心筋症の症状

心筋症の症状は、心筋症の種類や心筋のダメージの程度によって大きく異なり、心筋症が進行すると、全身の臓器に十分な血液や栄養を送ることができなくなる慢性心不全の状態になります。以下は心筋症の主な症状です。

  • 呼吸困難(特に労作時の息切れ)
  • 疲労感・動悸
  • 体重増加 
  • 手足のむくみ
  • 食欲低下

肥大型心筋症では胸痛、めまい、失神などの症状を起こすことがあり、また、不整脈による突然死の可能性もあります。心筋症は無症状のことも少なくありませんが、心筋症が進行すると、心臓への負担が増大し重篤な健康問題へとつながる可能性があります。

心筋症の診断

心筋症は、心臓の筋肉が障害され、全身に十分な血液を送ることができなくなる状態を指します。

以下は、心筋症の検査と診断方法です。

心電図検査

心電図は心臓の電気的な活動を記録する検査です、心筋症の進行によって特徴的な心電図の波形が現れることがあります。

胸部X線検査

胸部X線検査は、心臓や肺の画像を提供する検査です。心筋症の進行によって、心臓の拡大や肺血流の変化が見られることがあります。

心エコー検査

心エコー検査は、心臓の詳細な画像を提供する非侵襲的な検査です。心エコーにより、心筋の厚さ、内腔の拡大の程度、心筋の収縮力などの評価が可能で心筋症の診断に有用です。

血液検査

 血液検査は、採血を行い血液中の血球成分を測定する検査です。心室に負担があると分泌されるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンは心不全(心機能の低下)の病態を知るのに有用です。BNPの血中  濃度を測定し、心機能低下の程度を把握します。

心カテーテル検査

心臓カテーテル検査は、心臓に細い管(カテーテル)を挿入し、直接心臓内部の圧力や血液の流れを測定する検査です。冠動脈狭窄の有無や心機能の評価のために検査が行われることがあります。

心臓MRI検査

心臓MRIは、より詳細な心臓の画像を提供する検査で心筋炎の詳細な評価が必要な場合に行われます。

心筋生検

心筋の一部を採取して組織学的に顕微鏡にて心筋疾患の有無を検索する検査です。心筋症の種類を特定するのに有用な検査であり、心カテーテル検査によって心臓の筋肉の一部を採取し、顕微鏡検査にて心筋症の最終診断を行います。

24時間ホルター心電図検査

24時間ホルター心電図検査では携帯用の小型心電計を用いて、24時間心電図を記録します。閉塞性肥大型心筋症(HOCM)においては、重症致死性不整脈による突然死の危険性があるので、この病気を疑う場合には、異常がないか、24時間ホルター心電図検査が行われます。

心筋症の保存的治療

経過観察

症状が軽く病態が安定している初期の心筋症の場合には、経過観察が選択されることがあります。定期的な受診と検査を通じて病態の進行を把握し、適切なタイミングで治療を検討します。

薬物療法

心臓の負担を軽減するために、利尿剤(利尿作用を持つ薬)、心臓の収縮を改善する薬(降圧薬)など  が使用される場合があります。これらの薬物は症状の改善や心機能の安定化に役立ちます。

生活習慣の指導

心筋症による症状の進行を遅らせ、患者の生活の質を向上させる目的で、塩分の制限、適度な運動、飲酒や喫煙の制限、ストレス管理などの生活習慣の改善の指導が行われることがあります。

心筋症の対症療法

心筋症の対症療法は、病気の根本的な原因を治療するのではなく、患者の症状を緩和し、生活の質を改善することを目的としています。

心不全の管理

心筋症が心不全を引き起こす場合、利尿薬やACE阻害薬などの薬物が投与されることがあります。これらの薬物は、体内の余分な水分を排出し、心臓にかかる負担を減らします。また、重症心不全の改善のために両心室ペースメーカーを取り付ける心臓再同期療法(CRT)を行う場合もあります。左右心室のリズムをペースメーカーで補正することにより心不全症状の改善が期待できます。

不整脈の管理

心筋症により心臓の正常なリズムを乱す場合、抗不整脈薬が使用されることがあります。場合によっては、一時的なペースメーカーの挿入やカテーテルアブレーション(不整脈を治療する方法の一つ)など、侵襲的な治療が必要となることもあります。また、不整脈による突然死予防のために、植え込み型心室細動装置(ICD)を取り付ける場合もあります。

呼吸困難の管理

呼吸困難がある場合、酸素療法が行われることがあります。これにより、患者様の酸素飽和度を改善し、呼吸困難の症状を軽減します。

血栓・塞栓症の予防

不整脈による血流異常によって血栓を引き起こすリスクがある場合、血栓予防目的で抗凝固薬が投与されることがあります。

心理的サポート

原因不明の心筋症の診断や治療は、患者にとってストレスとなることが多いです。心理的サポートやカウンセリングが提供されることで、精神的な健康の維持と向上が図られます。

心筋症の外科的治療

心筋症の外科的治療は通常、保存的治療や対象療法が効果を示さない場合、または症状が重篤で急速に進行する場合に検討されます。そのような場合は以下のような外科的治療法が選択されます。

心臓移植

延命や救命のできない重度の拡張型心筋症(DCM)では心臓移植が唯一の選択肢であり、最終的な治療 法です。しかし、日本においては心臓移植の条件などもあり、心臓移植件数は極めて少なく待機期間も数 年近くかかると言われています。

人工心臓手術

人工心臓には体外型と植込み型の2つの方法があり、心臓移植が現実的に困難な場合に手術が行われま  す。体外型は心臓の代わりにポンプが体外にあり、ポンプと大きな駆動装置がつながっています。長期の 使用は可能ですが、その間に脳梗塞、脳出血、血栓症や感染などの合併症を引き起こすリスクがあり、病 院での厳重管理が必要なため退院することはできません。末期の心不全患者様の場合、離脱できず心臓移 植を待つしかない場合もあります。

左室形成手術

心臓移植や人工心臓手術はまだまだ患者さんのニーズを満たすほどに普及していない現在、外科的手術は左室形成術が選択される場合が多いです。

有名な左室形成術では「バチスタ手術」という手術があり一世を風靡しましたが、心臓を小さく縫縮しすぎて肝心な心臓の拡張機能を低下させたり、心筋の異常部位と正常部位の区別が不十分だったりなどの欠点があり、成績は満足のいくものではありませんでした。

現在は、左室形成術として改良・進化した「Dor(ドール)手術」「SAVE(セーブ)手術」「オーバーラッピング手術」などが行われております。どれが良いかという話ではなく、患者様の症状・容態にあった術式を主治医と話し合った上で決定することが大切です。

具体的な手術方法は症例によって異なりますが、一般的な左室形成術は以下のような手順で行われます。

  1. 開胸:全身麻酔下にて、執刀医のDrが開胸を行います。
  2. 体外循環開始:手術中の心臓と肺の役割を人工心肺という外部の装置に任せます。心筋保護液という薬剤を心臓に流し、心臓の拍動を停止させ、心臓の動きを完全に停止させます。
  3. 心筋の修復:心臓を切り開き、心筋の修復を行います。必要に応じて自己心膜やパッチやフェルトなどを使い、心筋の修復が行われます。
  4. 心臓機能の回復:切り開いた心臓を縫合し、HotShot(温めた血液と心筋保護液の混合液)にて心臓を拍動させた後、人工心肺を停止し、心臓の動きが自然に回復することを確認します。
  5. 閉胸:患者様の全身状態に注意しながら閉胸し、手術終了です。

入院~退院後の流れと、リハビリについて

心臓手術を受ける患者の入院から退院後に至るまでのプロセスと、心臓リハビリテーションについては以下のリンクをご参照ください。
入院中のケアから、退院後の生活への適応、そして心臓リハビリテーションを通じての健康回復と生活質の向上に至るまで、ご紹介しています。

よくある質問

こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。

心筋症とは何ですか?

心筋症は、心臓の筋肉(心筋)の変性によって心機能障害を引き起こす疾患の総称です。原因が不明な心筋症と、特定の心臓疾患や全身疾患に続発する心筋症に分類されます。

心筋症の主な種類は何ですか?

心筋症の主な種類には拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症があります。それぞれ心筋の状態や心機能の障害の仕方に特徴があります。

心筋症の発症原因は何ですか?

心筋症の発症原因には遺伝的要因、炎症と感染、高血圧、代謝性疾患、自己免疫疾患などがあります。これらは心筋にダメージを与え、心機能障害を引き起こす可能性があります。

心筋症の診断にはどのような検査が必要ですか?

心筋症の診断には心電図検査、胸部X線検査、心エコー検査、血液検査、心カテーテル検査などが行われます。これらの検査により心筋の状態や心機能の評価が可能です。

心筋症の治療方法にはどのようなものがありますか?

心筋症の治療方法には薬物療法、生活習慣の改善指導、対症療法、外科的治療法があります。重症の場合には心臓移植や人工心臓手術が選択されることもあります。

関連記事

【参考文献】

・2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン
一般社団法人 日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_nagai.pdf

・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/320

心疾患情報執筆者

心疾患情報執筆者

竹口 昌志

看護師

プロフィール

看護師歴:11年
《主な業務歴》
・心臓血管センター業務
(循環器内科・心臓血管外科病棟)
・救命救急センター業務
(ER、血管造影室[心血管カテーテル、脳血管カテーテル]
内視鏡室、CT・MRI・TV室など)
・手術室業務
・新型コロナウイルス関連業務
(PCR検査センター、コロナ救急外来、HCU、コロナ病棟、
コロナ療養型ホテル、コールセンター)

株式会社 増富