株式会社増富

高度管理医療機器等販売業 許可番号 第100327号

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虚血性心疾患

不整脈とは

不整脈

不整脈の概要

不整脈は、心臓の電気的活動の異常によって生じる一連の状態を指します。これは心臓が血液を効率的に全身に送り出すために必要なリズミカルな収縮と拡張のパターンが乱れることを意味します。心臓は電気信号によって制御されており、これらの信号が正しく機能しない場合、不整脈が発生します。このような電気信号の乱れは、心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺疾患、あるいは一部の薬剤の副作用など、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。

心臓の刺激伝導系の構成要素

心臓の刺激伝導系は、心臓の正常なリズムと収縮を制御する重要なシステムです。

洞房結節(SA結節)

心臓の自然なペースメーカーとして機能し、電気的刺激を生成します。
位置:右心房。
機能:心拍のリズムを決定。
健康上の考慮事項:洞房結節の機能不全は、心拍異常(不整脈)の原因となることがあります。

房室結節(AV結節)

洞房結節からの電気的刺激を受け取り、心室に伝達します。
位置:右心房と右心室の境界。
機能:電気的刺激の伝達を一時的に遅延させる。
健康上の考慮事項:AV結節の障害は、房室ブロックを引き起こし、心臓ペースメーカーの挿入を必要とすることがあります。

ヒス束

AV結節からの電気的刺激を心室に迅速に伝達します。
位置:心室中隔。
機能:心室の効率的な収縮を促進。
健康上の考慮事項:ヒス束の障害は、心室収縮の不均一性を引き起こすことがあります。

プルキンエ線維

心室筋に電気的刺激を広範囲に伝えます。
位置:心室壁全体。
機能:心室筋の均一な収縮を確保。
健康上の考慮事項:プルキンエ線維の異常は、心室性不整脈のリスクを高めることがあります。

一覧表

構成要素位置機能健康上の考慮事項
洞房結節(SA結節)右心房心拍のリズムを決定機能不全は心拍異常(不整脈)の原因になる
房室結節(AV結節)右心房と右心室の境界電気的刺激の伝達を一時的に遅延させる障害は房室ブロックを引き起こす可能性
ヒス束心室中隔心室に電気的刺激を迅速に伝達障害は心室収縮の不均一性を引き起こす
プルキンエ線維心室壁全体心室筋の均一な収縮を確保異常は心室性不整脈のリスクを高める

心臓内の電気信号の乱れとその影響

心臓内の電気信号の流れが乱れると、心筋の収縮パターンが不規則になり、心臓のポンプ機能に影響を与えます。これにより、全身への血液の供給が不十分になることがあり、疲労感、めまい、息切れ、胸痛などの症状が引き起こされることがあります。また、重度の不整脈では、失神や心臓発作を引き起こす可能性があり、場合によっては命に関わる緊急事態に至ることもあります。

不整脈の種類

不整脈には主に三つのタイプがあります。

徐脈

定義: 心拍数が通常よりも遅い状態。
発生頻度: 特に高齢者に多く見られる。
症状: 疲労感、めまい、時には意識喪失。
原因: 心臓の伝導系の問題、甲状腺機能低下、特定の薬剤の影響など。
リスク: 心臓が十分な酸素を全身に供給できない場合、重篤な合併症を引き起こす可能性。

頻脈

定義: 心拍数が異常に高い状態。
発生原因: 運動、ストレス、発熱、心臓疾患、カフェインやアルコール摂取など。
症状: 動悸、息切れ、胸の不快感、時には失神。
リスク: 継続すると心筋に過度のストレスがかかり、心不全や心臓発作のリスクが高まる。

期外収縮

定義: 予期せぬタイミングで追加の心拍が生じる状態。
特徴: 心臓が一瞬「跳ねる」感覚を伴う。
発生頻度: 年齢と共に増加する傾向があり、健康な成人にも発生可能。
原因: ストレス、カフェインの過剰摂取、喫煙、心臓の構造的な問題など。
リスク: 一般的には無害とされるが、症状が頻繁または重症の場合は心臓疾患の兆候である可能性があり、医師の評価が必要。

不整脈の発生の原因と種類

不整脈は心臓のリズム障害であり、さまざまな原因によって引き起こされます。これには、心臓自体の問題、体系的な健康問題、または環境要因が含まれることがあります。不整脈の発生原因として最も一般的なのは、冠動脈疾患、心筋症、心臓弁膜症、先天性心疾患などです。これらは心臓の構造的な異常に起因し、心臓の電気的な伝導経路に影響を及ぼします。

病気に由来する不整脈と生理的不整脈

不整脈は、病気に由来するものと、生理的なものに大別されます。

病気に由来する不整脈

特徴

健康問題が原因で起こる不整脈。

原因
  • 心臓病: 冠動脈疾患、心筋症、弁膜症など。
  • 高血圧: 慢性的な高血圧が心臓の負担を増やし、不整脈を引き起こすことがある。
  • 甲状腺疾患: 甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症が心臓のリズムに影響を及ぼす。
  • 糖尿病: 血糖値の異常が心臓の電気活動に影響を与えることがある。
リスク

治療しない場合、心不全や心臓発作、脳卒中のリスクが増加する。

生理的不整脈

特徴

一時的な外部要因によって引き起こされる一時的な不整脈。

原因
  • 運動: 激しい運動により一時的に心拍数が上昇する。
  • ストレス: 激しい精神的ストレスが心臓に影響を与えることがある。
  • カフェイン摂取: 高量のカフェインが心拍数を上昇させる。
  • アルコール使用: アルコールが心臓の電気活動に一時的な影響を与えることがある。
症状

一時的な動悸、心拍の不規則性。

注意点

通常は重大な健康問題を示すものではないが、症状が持続する場合は医師の診断が必要。

不整脈の一般的な分類と特徴

不整脈は、心臓のどの部分が影響を受けるかによって異なる分類に分けられます。

上室性不整脈(心房起源の不整脈)

特徴

心房の異常な電気活動によって引き起こされる。

種類
  • 心房細動: 心房が不規則に収縮し、心臓の効率的なポンプ機能が低下。
  • 心房粗動: 心房の収縮が速く不規則になる。
リスク

特に高齢者に多く、脳卒中のリスクが増加する。

症状

動悸、息切れ、疲労感、時には胸痛。

下室性不整脈(心室起源の不整脈)

特徴

心室の異常な電気活動によるもの。

種類
  • 心室頻拍: 心室が異常に速く収縮する。
  • 心室細動: 心室の収縮が非常に速く、不規則になる。
リスク

しばしば重篤で、突然死の原因となることがある。

症状

胸痛、失神、重度の動悸、呼吸困難。

この分類は不整脈を理解するうえで基本的であり、各不整脈に応じた治療戦略の選択に役立ちます。特に下室性不整脈は生命を脅かす可能性があり、迅速な医療介入が必要とされる場合が多いです。患者はこれらの症状を自覚し、異常を感じた場合はすぐに医療機関を受診することが重要です。

 不整脈の診断と検査方法

不整脈の診断は、患者の症状の詳細な評価と、心臓の電気活動を評価するための複数の検査に基づいて行われます。正確な診断は、適切な治療方針を決定するために不可欠です。

心電図検査やその他の診断手段

心電図(ECGまたはEKG)検査

用途: 不整脈の診断における基本的なツール。
機能: 心臓の電気活動を記録し、心拍のリズムや速度、電気信号の伝達を評価。
利点: 心房細動、心室頻拍などの不整脈の識別に有効。
制限: 一部の不整脈は間欠的なため、標準的なECGでは常に捉えられない。

ホルター心電図検査

目的: 24時間以上の長時間にわたる心電図記録。
適用: 持続的でない不整脈や症状の間欠的な発生を捉えるため。
利点: 日常生活中の心臓の動きを監視し、異常を記録。

イベントモニター

目的: 症状が現れた際に心電図を記録する。
特徴: 患者が症状を感じるときに使用するため、特定の症状に関連する心電図データを提供。

心エコー検査

目的: 心臓の構造と機能を超音波を用いて評価。
利点: 心臓の弁の問題や心筋の厚さ、ポンプ機能の効率性を評価するのに有効。

運動負荷試験

目的: 運動中の心臓の反応と機能を評価。
利点: 運動による心臓の反応を監視し、不整脈の発生傾向を確認。

血液検査

目的: 甲状腺機能障害や電解質の不均衡など、不整脈の原因となる可能性のある状態を識別。
利点: 様々な生化学的指標を通じて、不整脈の潜在的原因を探る。

これらの診断手段は、不整脈の原因を特定し、適切な治療法を決定するのに役立ちます。各検査は独自の利点と制限があり、総合的な評価のためにしばしば組み合わせて使用されます。

不整脈の治療法と管理

不整脈の治療と管理は、その種類と原因、患者の総合的な健康状態に基づいて個別に決定されます。治療の目的は、不整脈の症状を緩和し、将来の心臓の問題を防ぐことです。不整脈の治療法には薬物療法、非薬物療法、および生活習慣の改善が含まれます。

薬物療法

β遮断薬

心臓の伝導速度を減少させ、心拍数を低下させる。

カルシウムチャネル遮断薬

心臓の筋肉細胞へのカルシウム流入を減少させ、心臓の収縮力と心拍数を低下させる。

抗不整脈薬

心臓の電気的活動を安定化させ、不整脈を予防・治療する。

非薬物療法

カテーテルアブレーション

異常な電気経路を焼灼または凍結する最小侵襲手術。特定の不整脈の永続的治療に有効。

ペースメーカー

不整脈により心拍数が遅すぎる場合に使用。定期的なリズムで電気パルスを送り、心拍数を正常化する。

植え込み型除細動器(ICD)

重度の不整脈、特に心室細動に対して自動的に電気ショックを提供し、心臓のリズムを正常化する。

生活習慣の改善

ストレス管理

ストレス軽減技法を用いて心臓にかかる負担を減少させる。

運動

定期的な身体活動により心臓の健康を維持し、不整脈のリスクを低減する。

食生活の改善

心臓に優しい食事を摂ることで、不整脈の発症リスクを減少させる。

これらの治療法は、不整脈のタイプ、重症度、患者の全体的な健康状態に基づいて選択されます。適切な治療法の選択により、不整脈の症状を軽減し、患者の生活の質を向上させることができます。また、心臓発作や脳卒中などの重大な合併症のリスクを減少させることが可能です。

日常生活での不整脈管理と予防策

不整脈の管理には、健康的な生活習慣の採用が不可欠です。これには、バランスの取れた食事、定期的な運動、ストレスの管理、禁煙、アルコールの摂取量の制限などが含まれます。また、高血圧や糖尿病など、不整脈のリスクを高める可能性のある状態を適切に管理することが重要です。定期的な医療検査を受けることで、不整脈の早期発見と治療が可能になります。

不整脈と関連するリスク

不整脈は、多くの場合、生命に直接的な危険を及ぼすものではありませんが、一部の不整脈は重大な健康リスクを伴います。これらのリスクを理解し、適切な予防策を講じることは、心血管疾患の発症リスクを低減させる上で重要です。

命に関わる不整脈の種類とそのリスク

一部の不整脈は、特に治療を受けない場合、生命に危険を及ぼす可能性があります。例えば、心室細動は最も危険な不整脈の一つで、心室が効率的に収縮せず、血液が適切に体中に送られない状態を引き起こします。これは突然の心停止や心臓発作のリスクを大幅に高めるため、迅速な医療介入が必要です。また、心房細動は脳卒中のリスクを高めることが知られており、血液の固まりや血栓が形成されやすくなります。これらの状態は、定期的な医療検査と適切な治療計画により管理されるべきです。

不整脈と心血管疾患の関連性

不整脈は、心血管疾患の発症リスクと密接に関連しています。例えば、冠動脈疾患や高血圧などの状態は、不整脈のリスクを高めることがあります。また、不整脈自体が心血管系の他の問題を引き起こす可能性もあります。心房細動の患者は脳卒中のリスクが高くなることが知られており、その他の不整脈も心不全や心筋梗塞のリスクを高める可能性があります。したがって、心血管疾患の既往歴がある患者は、不整脈の発生に特に注意を払い、定期的な健康チェックと適切な治療を受けることが重要です。

入院~退院後の流れと、リハビリについて

心臓手術を受ける患者の入院から退院後に至るまでのプロセスと、心臓リハビリテーションについては以下のリンクをご参照ください。
入院中のケアから、退院後の生活への適応、そして心臓リハビリテーションを通じての健康回復と生活質の向上に至るまで、ご紹介しています。

よくある質問

こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。

不整脈とは何ですか?

不整脈は心臓の電気的活動の異常によって生じる状態で、心臓のリズミカルな収縮と拡張のパターンが乱れることを指します。これは心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺疾患など様々な原因によって引き起こされます。

不整脈の診断方法にはどのようなものがありますか?

不整脈の診断には心電図(ECG)、ホルター心電図、イベントモニター、心エコー検査、運動負荷試験、血液検査などがあります。これらは心臓の電気活動を評価し、不整脈の原因を特定するのに役立ちます。

不整脈の一般的な治療法は何ですか?

不整脈の治療には薬物療法(β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗不整脈薬)、非薬物療法(カテーテルアブレーション、ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD))、生活習慣の改善(ストレス管理、運動、食生活の改善)が含まれます。

日常生活で不整脈を管理するためにはどのようなことを心がけるべきですか?

不整脈の管理には、バランスの取れた食事、定期的な運動、ストレスの管理、禁煙、アルコール摂取の制限が重要です。また、高血圧や糖尿病などの状態を適切に管理し、定期的な医療検査を受けることが推奨されます。

不整脈がもたらすリスクにはどのようなものがありますか?

不整脈は多くの場合、生命に直接的な危険を及ぼすものではありませんが、一部の重篤な不整脈(例えば心室細動)は、突然の心停止や心臓発作のリスクを高めます。また、心房細動は脳卒中のリスクを増加させます。これらのリスクは、定期的な医療検査と適切な治療計画により管理されるべきです。

関連記事

【参考文献】

・不整脈|病気について|循環器病について知るー国立循環器病センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/arrhythmia/

・心臓のこと、不整脈のことー不整脈ドットコム
https://fusei39.com/patient/heart1.shtml

・刺激伝導系と心拍動の自動性|循環
https://www.kango-roo.com/learning/2228/

心疾患情報執筆者

心疾患情報執筆者

増田 将

株式会社増富 常務取締役

プロフィール

医療現場支援歴:10年
《主な業務歴》
・医療現場支援歴:10年
・循環器内科カテーテル治療支援:3,000症例
・心臓血管外科弁膜症手術支援 :700症例
・ステントグラフト内挿術支援 :600症例