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閉塞性血栓血管炎(TAO)

動脈系疾患

閉塞性血栓血管炎(TAO)の概要

閉塞性血栓血管炎(TAO)は、別名バージャー病とも呼ばれており、血管内で血栓が形成され血流を阻害することにより、組織や器官への酸素および栄養素の供給が妨げられる状態を指します。主に20〜40歳の男性喫煙者に発症し、女性の発生はまれな厚生労働省の指定難病です。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の基本

閉塞性血栓血管炎(TAO)は、血栓が血管を塞ぐことで血流が妨げられ、組織への血液供給が不足する状態を指します。病態の進行によっては重大な健康問題や生命を脅かす状況に至ることがあります。

血栓とは何か

血栓は、血液成分が固まり血管内の血塊を形成することにより発生します。通常の血栓形成は、身体を保護するための人体の仕組みです。例えば、外傷による出血があった場合、血小板凝集作用によって血栓が形成され止血されます。しかし、血栓が形成される場所によっては血流が妨げられ、様々な健康問題を引き起こす原因にもなります。

  • 血液凝固の過程:血液凝固は、血小板の凝集、凝固因子の活性化、フィブリンの形成など、複数の段階を経て凝固されます。
  • 影響を受けやすい条件:高血圧、高コレステロール、喫煙、糖尿病、肥満、遺伝的要因などが血栓形成のリスクを高めます。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の原因

閉塞性血栓血管炎(TAO)の原因は未だに解明されていません。遺伝的要因と生活習慣要因が関与しているのではないかと考えられています。

遺伝的要因

特定の遺伝的素因に刺激が加わることで発症するという説が有力といわれています。

生活習慣要因

閉塞性血栓血管炎(TAO)は、喫煙が発症と病気の進行に強く関与していることが分かっており、喫煙による血管攣縮が誘因になると考えられています。喫煙は閉塞性血栓血管炎(TAO)の発症リスクに大きな影響を及ぼします。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の症状と徴候

閉塞性血栓血管炎(TAO)には特定の症状があり、疾患の進行を示す重要な指標となります。

  • 四肢の痛みや冷感:手足の血管が塞がれると、痛み、しびれ、または冷感が生じることがあります。
  • 間欠性跛行:歩くと足にしびれや痛みが出たり、安静時に強い疼痛が出現します。
  • 潰瘍:高度の虚血になると、四肢に潰瘍が形成され壊死に至る特発性脱疽の状態となります。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の診断

閉塞性血栓血管炎(TAO)の正確な診断は、効果的な治療計画の策定に不可欠です。患者の症状の詳細な評価、物理的検査、画像検査などに基づいて診断が行われます。

診断方法

閉塞性血栓血管炎(TAO)の診断には、患者の症状、病歴、画像検査およびリスク要因を評価し、病態の存在と範囲を特定する必要があります。

物理的検査と症状の評価

症状と物理的検査の評価は、診断における最初のステップです。医師は、患者の症状、健康状態、および可能なリスク要因に関する詳細な情報を収集します。

  • 症状の確認: 症状の種類や程度、持続時間を詳細に記録します。
  • 物理的検査: 脈拍、血圧、および特定の身体部位(特に影響を受けやすい領域)の検査を行い、異常があるかどうかを確認します。

検査

症状の評価と物理的検査の後、画像診断と血液検査を行い病態の範囲を特定します。

ABI検査(足関節上腕血圧比)
  • ABI検査は、足首と上腕の血圧を比較することにより虚血状態を評価する検査です。ABIの値が0.9未満であれば虚血の存在が示唆されます。
TBI検査(足趾上腕血圧比)
  • TBI検査は、足趾血管の石灰化が進行している患者に対して上腕と足の親指の血圧を比較することにより虚血状態を評価する検査です。TBIの値が0.6未満であれば狭窄などの血流障害が疑われます。
PWV検査(脈波伝播速度)
  • PWV測定は、動脈の硬さを評価するために用いられます。
血管超音波
  • 超音波検査は、血管内のプラークや血流の異常を可視化するために用いられます。特に、ドップラー超音波は、血流の速度と方向を測定し、狭窄箇所を特定するのに有効です。
画像診断
  • 超音波検査、CT、MRI、および血管造影などがあります。これらのテストは、血管の詳細な画像を提供し、血栓の位置と大きさなどを特定するのに役立ちます。
血液検査
  • 凝固因子、炎症マーカー、および他の関連する血液成分を測定します。血栓形成のリスク要因を評価し、他の病態との鑑別診断を行います。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の治療法

喫煙している閉塞性血栓血管炎(TAO)患者は、症状や疾患の進行を予防するために必ず禁煙が不可欠です。他に薬物療法や外科的治療などがあり、患者の特定の病態と全身状態に合わせて治療が選択されます。

薬物療法

薬物療法は、血液凝固を抑制することにより既存の血栓を縮小または除去し、新たな血栓形成を防ぐために使用されます。以下は、一般的に使用される薬剤です。

  • 抗血小板薬: アスピリンやクロピドグレルなど、血小板の凝集を防ぎ、血栓形成リスクを減少させます。
  • 抗凝固剤: ワルファリンや新規経口抗凝固剤(NOACs)など、血液凝固を抑制し血栓形成を防ぐために使用されます。
  • 血栓溶解薬: 急性の血栓症状を有する患者において、既存の血栓を溶解するために使用されることがあります。
  • プロスタグランジンE1製剤:末梢血管を拡張させ血流を改善させる目的で使用されることがあります。

外科的治療

薬物療法だけでは不十分な場合や特定の状況下において、血行再建のための外科的治療が行われます。

  • 血管バイパス手術: 重症例に対しては末梢血管床が良好であれば、血液が閉塞した血管を迂回して流れるようにするために、他の部位から採取した血管を使用して新しい経路を作ります。
  • 血栓摘出術: 特定の血管内の血栓を直接除去するために行われる手術です。

血行再建術が適応外の場合や手術後も改善がみられない場合は、交感神経節ブロックや交感神経節切除手術が行われる場合があります。。

生活の質への影響

健康的な生活習慣は、血栓の形成を防ぎ病状を改善する上で最も重要な予防策となります。

  • バランスの取れた食事: 心血管健康を支える食事には、野菜、果物、全粒穀物、低脂肪のたんぱく質が含まれます。
  • 禁煙: 喫煙は主要な要因であり、禁煙は血栓形成リスクを著しく低減させます。
  • 体重管理: 正常な体重を維持することで、高血圧、高コレステロール、および糖尿病のリスクを減少させます。
  • ストレス管理: 適切なストレス管理技術(瞑想、深呼吸、趣味など)を身につけることで、心血管疾患のリスクを低減できます。

入院~退院後の流れと、リハビリについて

心臓手術を受ける患者の入院から退院後に至るまでのプロセスと、心臓リハビリテーションについては以下のリンクをご参照ください。
入院中のケアから、退院後の生活への適応、そして心臓リハビリテーションを通じての健康回復と生活質の向上に至るまで、ご紹介しています。

よくある質問

こちらのコラムの内容の要点を「よくある質問」からまとめています。

閉塞性血栓血管炎(TAO)とは何ですか?

閉塞性血栓血管炎(TAO)、またはバージャー病は、血管内で血栓が形成され血流を阻害し、組織や器官への酸素及び栄養素の供給を妨げる疾患です。主に20〜40歳の男性喫煙者に見られ、女性にはまれです。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の主な原因は何ですか?

閉塞性血栓血管炎(TAO)の具体的な原因は未だに解明されていませんが、遺伝的要因と喫煙が発症に強く関与していると考えられています。

閉塞性血栓血管炎(TAO)における主な症状にはどのようなものがありますか?

主な症状には、四肢の痛みや冷感、間欠性跛行、および潰瘍や壊死に至る特発性脱疽の状態が含まれます。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の診断方法にはどのようなものがありますか?

閉塞性血栓血管炎(TAO)の診断には、物理的検査、症状の評価、画像検査(ABI検査、TBI検査、PWV検査、血管超音波)、CT、MRI、血管造影などがあります。

閉塞性血栓血管炎(TAO)の治療法にはどのようなものがありますか?

治療法には禁煙、薬物療法(抗血小板薬、抗凝固剤、血栓溶解薬)、外科的治療(血管バイパス手術、血栓摘出術)、およびプロスタグランジンE1製剤の使用があります。重要なのは、喫煙の完全な中止です。

関連コラム

【参考文献】

・一般社団法人 日本循環器学会
末梢動脈疾患ガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Azuma.pdf

心疾患情報執筆者

心疾患情報執筆者

竹口 昌志

看護師

プロフィール

看護師歴:11年
《主な業務歴》
・心臓血管センター業務
(循環器内科・心臓血管外科病棟)
・救命救急センター業務
(ER、血管造影室[心血管カテーテル、脳血管カテーテル]
内視鏡室、CT・MRI・TV室など)
・手術室業務
・新型コロナウイルス関連業務
(PCR検査センター、コロナ救急外来、HCU、コロナ病棟、
コロナ療養型ホテル、コールセンター)

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